「八代への思い入れを育む場づくり」を目指す私たちにとって、自分たちの思いも、まわりの人たちの思いもとても貴重なものであるだけに、
『思いがない』
という言葉は新鮮でした。
今回のインタビューでは、随所でその背景となるようなお話をお聞きできたような気がします。
今回お話をお伺いしたのは、高見聡一郎さん。
高見商店の3代目として会社を支えながら、八代青年会議所の活動などもされています。
プライベートでは一児のパパさん。
お仕事やワークライフバランスのこと、八代とで働くことなどについてお聞きました。
高見商店について
高見商店さんで作られているのは、主に、辛子蓮根とカット野菜。
辛子蓮根は熊本の郷土料理。
蓮根を仕入れ、味噌をつめ、揚げて、といった工程で製造。従業員さんはその全ての工程に携わっていらっしゃいます。
サービスエリアや駅、空港といったところに卸したり、
全国のスーパーや百貨店で定期的に開催される九州フェアに、“九州の特産品”として出したり。
また、居酒屋を中心とした飲食店へ商品や、共同でのPR方法の提案などもされるそうです。
辛子蓮根は熊本の特産品、全国どこでも通用するというのが会社の強みのひとつ。
高見商店さんほどの大きい規模で生産しているところは熊本市内でもあまりないんだとか。

自ずと、後を継ぐ覚悟はできていた
ーー高見さんは3代目ということですが、会社を継ぐことは幼い頃から決まっていたんですか?
そうだね、漠然と。長男だったっていうのもあるし。
だから大学は経営学部、就職したところは食品関係でした。
「戻ってこいよ」みたいなことは特になかったけど、やっぱり帰って来たときに先代の仕事を見てるから、
自ずと「やるんだろうな」と思って、それに関わることを勉強してきたような。
ーー進路に迷われたことは?他のことやってみたいとか。
なかった。
それなりに従業員さんもいるし、俺がしなかったらどうなるのかと思ったら。
家族経営だから、それはもう、覚悟はできていたような感じで。
八代って土地がいい
幼い頃から会社を継ぐとなんとなく思っていたという高見さん。
生まれと育ちはずっと会社と家庭のある八代なんだそう。
大学進学の際に一度関西に出られ、八代以外の場所での暮らしも経験した高見さんに、八代という場所についてお聞きしてみました。

ーー生活の場所として、また働く場所として、八代はどんなところですか?
高校の時まではあんまり地元というものを意識することはなかった。
やっぱり離れてから、「八代いいな」「ふるさとだな」っていうのは感じるようになって。
都会も都会で魅力はある。人はたくさんいるし、おしゃれな建物はあるし、刺激があって。
八代と、関西の都会なところと、両方見てたから、地元しかない!って感じはあまりない。
でも八代のような土地柄の強みもある。八代ってもう土地がいい。
新幹線通ってるし、高速もあるし、うちみたいな食品加工にとっては農作物があるのも良い。
海もあるし、人も適度にいるし、今後は輸出なんかも可能性がある。
都会過ぎなくて…まあ田舎だけどね(笑)
ちょうど適した場所かなと思ってる。
どうしても、ちょっと前までだと人手不足が騒がれていたけれど、そんな中でもそれなりに人が集まるような土地柄だった。
八代で商売するにあたって、うちの業種はあんまりそういう心配はなかった。
うちの仕事は資格や専門性が必要なくて、色んな人が幅広く集まる。
ちょっと時間が空いたときに働こうと思ったり、重いものは持てなかったり、子どもや孫のお世話のためにフルタイムでは働けなかったり、休みもとらないといけなかったりとか。
そういう人たちの働き方のニーズにも合わせられる。
とはいえ、やっぱり首都圏、関西や関東も相手に商売していかないといけなくて。
うちの場合はお土産物や惣菜で、“お客さんの胃袋を満たす”ことが大事な商売をしているから、人がどんどん減っていく田舎では、少しの層を相手にしていると、一時品になっていってしまう。
似たようなカット野菜屋さんなら関西や関東にもあると思うんだけど、設備投資のしやすさなど八代でするメリットもある。
例えば、建物建てようと思ったときに、同じ規模でも都会で建てる方が高いとか。
うちにとってはそういうところが八代の魅力かな。
自分の都合の話はあまり出さない
高見さんご自身でも、営業をされるそう。
営業するときに大事なのは、お客さんの情報をいかに聞きだすか。
何に使われるのかを聞いて、それに合うような提案を持っていく。
カット野菜は、5キロ単位・10キロ単位で卸したりもするし、小さいお弁当やさん相手に500グラムというような、小さい単位でも仕事を受ける。

辛子蓮根を自分のお店で揚げている居酒屋に対して、うちの辛子蓮根を提案するときには、
こだわりがあって辛子蓮根を作っている反面、時間がかかる・ロスが出るといったデメリットも生じる。
そんなデメリットを解消してあげられるような提案を考える。
「うちのが美味しいですよ」とか「価格が安いですよ」とか、そういった自分の都合の話はあんまり出さない。
相手の不満を解消してあげられるような提案をすることを大事にしています。
経営者として、営業マンとして、当然ながら社内で大忙しの様子の高見さんですが、
八代青年会議所にも所属されていたり、お子様がいらっしゃったり、色々な顔をお持ちです。
社外での活動への思いや、ワークライフバランスについても、お話しいただきました。
地域の1人として、一児の父として
ーー八代青年会議所(以下:JC)の活動はどういうきっかけで始められたんですか?
JCは八代のまちのために広域的に活動する団体で、全国組織。
親が入っていたからっていうのもあるけど、同じ立場の人たちと悩みの共有がしたくて入った。
同じような立場の人たちが、フラットに、同じ目線で物事を考えてくれるから。
あと、友達づくり。
今の仕事は、父がずっと積み上げてきたもの。取引先とか、経済団体の知り合いの人とか。
それから今、代替わりして、全部親の七光りでではいけないから。
早く自分自身の知り合いとか得意先とかを見つけようっていうのもあって。
今ちょうど、JCの潮目も変わってきていると思う。どうなっていくかはわからないけれど…。
もっと地域のためになることをできたらと思う。
地元で仕事をさせてもらっている以上、やっぱり恩返しみたいなことだとも思う。
ーープライベートでは、奥様と息子さんとの朗らかな姿も印象的です。“ワークライフバランス”のこだわりはありますか?
うちはもともと古風で、家のことは母がなんでもする。掃除も洗濯も。
父は仕事ばっかりで。
ただ、僕自身は県外での一人暮らしも長かったから、自分で料理したりとか、掃除・洗濯ももちろんしていた。
大学のゼミがワークライフバランスを研究するところで、ゼミ長とかしていて。
だから余計に、そういうのは自然と染み付いてる感じ。
頑張って何かをしているということではなく、子どもとどこかへ出かけるとか、料理するとか、嫌いじゃなくて。

『思いがない』という強み
ーー最後に、野望や展望、「これだけは伝えたい!!」ことはありますか?
展望としては、今コロナの影響で学校給食が止まっていたり、
辛子蓮根にしても、普段は観光客の買い手が多いのに、今は移動が制限されて全然来なくて。
そういったところを踏まえて、今食品関係で伸びているスーパーみたいなところに卸すようなカット野菜に力を入れたい。
それからスーパーの加工食品、例えばカレーとか簡単な惣菜とか、「これとこれを和えればもう作れますよ」といった半調理品。
ただでさえ、より多くの人が働くようになって、毎日料理をするのも難しく、中食が増えているような状況。
そういったことに対して、メニューやキットの提案ができればいいかなって、新しく考えています。

野望、そこまであんまりギラギラしていなくて(笑)
『あんまり 思い がないんだよね』
八代の広報誌に載っている方たちを見ると、「うちのトマトはこういうところがおいしい」とか「こういうところにこだわっています」みたいな思いが強い。
そういうものは、うちは弱いような。
「相手のニーズや困りごとに対して応えていく」ことを大事に、バランスを取っていきたい。
「思いがない」とあえて言葉で聞くことがあまりなく、新鮮な感覚でしたが、会社としての思いを持とうとしすぎない・出そうとしすぎない、というスタイルが、高見さんのお仕事にすごくフィットしているように感じます。
熊本の特産品である辛子蓮根が、私たちの地元八代から各地へ届けられているというのも、とても誇らしいこと。
これからのさらなるご活躍、応援しております!
▼高見商店ホームページ
https://www.karasirenkon.com/
※この記事はご本人へのインタビューをもとに作成しております。


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